ひとときもとどまることのない清らかな朝日に照らされ、その肉体は寄せては返すさざ波のように、灰色になったり、虹色になったりした。肋骨の浮いた脇や、極端に薄い腹、琥珀色に透き通る長い前髪の覆う額などに、青白い影が滞留して神経質なくすくす笑いをした。一の存在はそのたびに希薄になっていった。せっかく、骨を砕き、皮膚をむしり、手のひらにピンを刺して留めおいたのに。純太は彼女の心と同じように、彼女の美しさをも愛していたが、その秩序を外れた美しさは、かえって純太を苦しめた。人間が生まれ、繁栄するよりも遥かに昔、北の氷海で人知れず芽生えた神や妖精たちの、そのまた幻想の上に、今の彼女の美しさは立脚している。
 純太は手のひらを差し伸べて一の小さな頭を掬いとり、光の中にとどめて、その顔の造形をつぶさに見た。光に向かって彼女の瞳は、青く、また虹彩の深い部分はオリーブグリーンやベージュ、金色にきらめき、涙の薄い膜に純太の不安そうな顔を写していた。長いまつ毛が花冠のように、外界に向かって静かな展望を見せていた。薄い下瞼に、ほのかに透けた血色の上に、生理的な涙が一粒、ぽろりとこぼれて伝った。頬へ滲むまえに、無骨な男の指がそれを拭った。一をかかえる純太ごと抱き包むようにして、公貴が、覆い被さってきたのだった。大柄な彼に遮られて、ふたりは茫漠とした影の霧の中に踏み入れることになったが、注がれる彼の怜悧なまなざしが突き通るようで、迷うことはないだろうと思われた。一の頬を撫でながら、公貴は純太に微笑した。どこも硬質に作られているかのような彼の顔が、微笑みの形になると、目尻に幾重にも皺が寄って、やさしさに潤うようだった。純太は自ら、彼の肉厚な唇に触れた。顎を傾けると、公貴もまぶたを閉じ、また遮られた視界に変わって硬い指腹で純太のうなじの形を確かめた。啄むようなじゃれあいのあとには、一の唇にも公貴の息遣いを教えた。公貴は、彼女の細い肩の皮膚に甘く歯で戯れている。
 障子の隙、縁側の向こうに、まだ青い桜や紅葉の木、鬱蒼と茂る竹林が見える。無数の葉の中で細かに散った光が踊る。愛し合う。綿のシーツの上に一の、無味乾燥とさえ思われる身体を横たえ、唯一湿って濡れている器官の中へ、公貴が勃起したものを入れた。あまりあるほど大きなものを、狭い道に受け入れて、彼女の腹はうっすらと膨らんでいる。か細い喘ぎのために、春の花の小さな花びらを貼り合わせたみたいな唇が、よるべなく震える。その表面に純太はふたたび、この上なく慈しみ深い愛撫を施した。子どものために作られた木のおもちゃを思わせる、こぶりな右手が、純太の首に切実に縋った。公貴には左手が差し伸べられていた。二人は思い思いに、いとおしい女の手を握り返した。不自然にひやりとした空気が足の裏をさする。灯してあった行灯の明かりが、魚が息つぎをするみたいにときおり波立つ。彼女の嗚咽が高まる。公貴が一の背を抱き起こし、寡少な尻の肉、その狭の肛門を示して、純太にも彼女と接続するよう求めた。公貴のおおらかな微笑の中に潜む、かすかな歪み。泣き濡れた一の花顔。首肯し、頭を擡げてきた先端を、本来であれば排泄のために存在する穴の中へ潜らせる。一の肩越しに公貴の唇を吸う。一を蝶番にして、誰憚らず、三人が一つのものになる。さみどり色の法悦。何にも先んじて、一が息を詰め、背をしならせて果てた。彼女の内臓の震えに耐えかねて、公貴も吐出したと思われた。肩で息をする一の腹を撫でて、公貴が彼女の顔じゅうにねんごろな愛撫を施す。純太もしばらく、彼女の背骨の凹凸に頬擦りしたり、耳がらを歯でやさしく噛んだりして、二人の事後のむつみ合いにもつれていたが、そのうち自分がまんじりともいかなくなって、咄嗟に腰を引き、仙骨の窪みのあたりに射精した。