2023-10-04から1日間の記事一覧

XI

月のない深夜の東京郊外、街灯の白々しい明かりばかりを光源にして、華奢に骨ばった身体が陰翳の中へ浮かんでくるのを、恍惚とした気分で見下ろしていた。 ふっくらと持ち上がった繊細な指が、広げたり閉じたりを所在なさげに繰り返す。尺骨の形にくびれた手…

2023/10/04

踊る女たちに囲まれて、悠然とみくらに座したウブドの王が、金の額縁から眼下の二人を見下ろしている。はじめは、そのまなざしが存外にやわらかいものであること、ほとんど飛びかけた意識のうちに知覚した。 ラタンの天蓋から厳かに垂れた薄いレース布越しに…